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外ヘルニアと内ヘルニア

 

腹腔内のヘルニアは、「外ヘルニア」と「内(ない)ヘルニア」にわけられます。

 

 

外ヘルニアというのは、基本的に、腹腔内の臓器が腹膜をかぶったまま腹腔外に脱出するヘルニアをいいます。

 

逆に、内ヘルニアというのは、腹腔内の臓器が大網膜や腹膜の裂孔(=あな)に入り込むヘルニアのことをいいます。

 

内ヘルニアより外ヘルニアの方が発症率が高くなっています。
外ヘルニアの主な種類は、臍ヘルニア(でべそ)、鼠径ヘルニ(脱腸)、大腿ヘルニアなど、よく知られている病気が多く、
内ヘルニアの場合は、腸間膜ヘルニア、大網ヘルニアなどで、あまり馴染みのない病名ばかりです。

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ヘルニアの合併症イレウスとは?

 

内ヘルニアなどの合併症としてよく発症するのが「イレウス」です。

 

イレウスとは、日本語で「腸ねん転」や「腸閉塞」と呼ばれていて、腸管内容の肛門側への移動の過程に障害が起こる病気です。

 

 

ヘルニアが原因で、腸管が途中で絞められたり閉鎖してしまったりします。
腹部に膨満感があったり、排便・排ガスが出なくなったり、吐き気や嘔吐といった症状があらわれます。

 

 

エックス線検査によって診断できますが、重症になると腸管が壊死する可能性もあるので、早期の発見・診断・治療が必要です。

大網裂孔ヘルニアとは?

 

「大網裂孔ヘルニア」は、内ヘルニアの中でももっともまれな病気です。

 

欧米でもあまり報告例がありません。

 

 

数少ない症例を統計すると、やや男性に多く、40〜60歳代中心に発症する病気です。

 

大網とは胃から垂れ下がって、腹膜にある臓器を覆っている脂肪組織のことで、その組織の裂け目(孔)から腸管が入り込んでしまうのが大網裂孔ヘルニアといいます。
症例が少ないので、大網に裂孔ができる原因が先天説と後天説(外傷・炎症・加齢など)と両方あります。

 

大網裂孔ヘルニアの症状と治療法

 

「大網裂孔ヘルニア」は内ヘルニアの中でももっともまれな病気で、症状も腹痛、嘔吐、腹部膨満など内ヘルニアの他の病気と変わらないため、その診断は非常に困難とされています。

 

唯一特徴的といえるのが、‘開腹手術をしたことがない人が多い’ことです。

 

 

また、ここではヘルニアの治療というよりも、合併症である「イレウス症状(腸ねん転・腸閉塞)」によって、腸管が壊死している場合に対する処置の方が重要とされます。
イレウス症状の処置の際に、ヘルニアの存在を認めることも少なくありません。

 

 

大網裂孔ヘルニアの手術

 

「大網裂孔ヘルニア」の手術は、ヘルニア内容である腸管を大網裂孔から元に戻し、裂孔部の修復をするという2点が主となります。

 

 

大網裂孔から入り込んだ腸管を整復した後、その腸管を温存するか切除するかを選択します。

 

腸管の循環障害がひどかったり壊死を起こしていたりする場合は切除します。

 

 

最後に、大網裂孔の処置が行われます。
通常は、孔の部分を縫合して閉鎖する手術がおこなわれますが、あまりにも大きい孔の場合は大網自体を切除することになります。

Winslow孔ヘルニア

 

「Winslow孔ヘルニア」は内ヘルニアの1つです。

 

 

Winslow(ウィンスロー)とは「網嚢孔」のことで、
網嚢孔とは、網嚢と肝十二指腸間膜の後方にある「網嚢」という腹腔内のポケットのことです。

 

 

網嚢は、このWinslow孔のみをその入り口としています。

 

Winslow孔ヘルニアは、この網嚢孔に腹腔内の臓器内容が入り込んでしまう病気です。
非常にまれな病気ですが、新生児から老人までどの年齢層にも発症します。

 

Winslow孔ヘルニアのタイプと原因

 

「Winslow孔ヘルニア」は、そのヘルニア内容によって4つのタイプに分けられます。

 

 

まず、T型は、小腸を内容とするヘルニアで約60パーセントを占めます。
続いてU型は、盲腸・上行結腸・回腸末端を内容とするもので、30パーセントを占めます。
残りの10パーセントが、横行結腸と胆嚢で、それぞれV型とW型となっています。

 

発生要因
  1. Winslow孔が異常に大きい
  2. 上行結腸(盲腸から右結腸曲までの結腸部分)が後腹膜に固定されていない
  3. 総腸間膜症がある

    ※総腸間膜症とは、腸が回転せず、お腹の右側に小腸があり大腸が左側にあってその共通の腸間膜(総腸間膜)が後腹膜に固定されていない病気

  4. 肝右葉が異常に大きい

    ※肝右葉とは、肝臓の右側全体をさし、右肝静脈や中肝静脈が通っています。

  5. 小腸間膜が異常に長い

なかでも、1と2の要因が多いとされています。

 

このほか、間接的な要因としても次のことがあげられています。

 

a.肥満
b.大食
c.咳嗽(がいそう)
d.努責(=いきみ)
e.重労働
f.妊娠

 

 

1〜5の局所的要因に、a〜fの間接的要因が重なって、Winslow孔ヘルニアが発症すると考えられています。

 

Winslow孔ヘルニア急性と慢性

 

「Winslow孔ヘルニア」は、急性と慢性とにわけられます。

 

急性のものは、突発的な腹痛が起こります。

 

 

それ以外に主だった症状はなく、イレウス症状(腸ねん転や腸閉塞)を合併する事によってその症状が出ることがあります。
急性発症の合併症として、もっとも注意すべきものは「腸管の壊死」です。

 

Winslow孔から網嚢に入り込んだ腸管の組織が死んでしまうのです。
発症率は、Winslow孔ヘルニア患者の2〜3割にも及ぶといわれています。

 

 

慢性のものは腹部の上あたりに何かしらの症状が出ますが、ヘルニアと診断されるのは、たいがいイレウス症状への診断治療を行うときに同時に発見されることが多いようです。

Winslow孔ヘルニアの診断方法

 

「Winslow孔ヘルニア」はきわめてまれなヘルニアである上に、独特な症状がないため、単独での診断は困難となっています。

 

 

「イレウス症状(腸ねん転、腸閉塞)」を合併する事で、嘔吐や痛みがおきたりエックス線検査で網嚢内にガスが認められたりすることで、
初めてこのヘルニアを疑えるというのが現実です。

 

 

エックス線検査の結果でWinslow孔ヘルニアの存在が疑われると、CTや上部消化管・注腸の造影でより詳しく診断されることになります。

 

 

治療法と治療後

 

「Winslow孔ヘルニア」の治療法としては、やはり手術がもっとも有効だとされています。

 

 

手術を行う前に飲食を絶って、ヘルニア内容を吸引し続けるという療法がありますが、
一時的に症状を軽くすることはできても、これで整復するのは困難だと思われます。

 

 

したがって現在では、網嚢に入り込んだヘルニア内容を引っ張り出した後、網嚢を整復する開腹手術がおこなわれています。

 

 

腸管が絞められていたり網嚢内に癒着していると、その部分を切除する場合もあります。

 

 

再発防止策として、Winslow孔の広さを縮めて縫うという方法もありますが、これには相当の技術と細心の注意が必要となるので、あえておこなう必要はありません。

 

 

一昔前は、50パーセントの手術成功率でしたが、現在ではほぼ100パーセントの成功率で、術後も良好なものが多くなっています。
ただし、発見が遅れたり診断が遅れたりすると、イレウス症状(腸ねん転・腸閉塞)も深刻になったり腹膜炎が起きたりするため、術後に不良となる率は高くなります。

傍十二指腸ヘルニアとは?

 

「傍十二指腸ヘルニア」とは、内(ない)ヘルニアの1つで、十二指腸付近にある孔(あな)から腹腔内の臓器が入り込むという病気です。

 

 

孔だけではなく、ひだによって形成された袋状の嚢(のう)の中に入り込む事もあります。

 

内ヘルニアの中では一番発症頻度が高く、その7割が男性患者と言われています。
傍十二指腸ヘルニアは、主に10代から20代の男性に多くみられる病気ですが、少数ながら女性もかかる可能性はあります。

 

傍十二指腸ヘルニアの診断

 

「傍十二指腸ヘルニア」を診断する方法としては、様々な方法があります。

 

 

患者の自覚症状としては、まず「腹痛」「嘔吐」がほぼ全例にあてはまる症状となっています。
他、少数ですが、まれに「腫瘤」「便秘・下痢」「吐血」などの症状も出ます。

 

検査について

 

  1. 『理学的検査』※理学的検査とは、視診、打診、触診、聴診・血圧測定などの診察のことをいいます
  2. 『腹部単純エックス線検査』※正しく診断できる例は少ないとされています。
  3. 『バリウム・ガストログラフィンによる消化管追求検査』
  4. 注腸検査
  5. 動静脈撮影法
  6. CTスキャン

 

基本的に、傍十二指腸ヘルニアの診断は難しいといわれていて、丁寧な問診と様々な検査を行うことが正確な診断に結びつきます。

 

傍十二指腸ヘルニアの治療法

 

「傍十二指腸ヘルニア」の治療法としては、ほぼ開腹手術がおこなわれます。

 

 

というのも、ヘルニア自体の治療というよりも、イレウス(腸ねん転や腸閉塞といった病気)との合併が懸念されるために、開腹する目的が大きくなっています。

 

 

ヘルニア内容は、小腸、空腸とで発症例の半数を占めます。

 

 

したがって、手術自体は単純で、ヘルニア嚢内の腸管を開放し整復する事でほぼ完了します。
術後も比較的安定する手術内容になっています。

盲腸周囲ヘルニアとは?

 

盲腸の周りにある腹膜の窪みに、腸管が入り込む病気を「盲腸周囲ヘルニア」と言います。

 

 

盲腸の周りの腹膜には4つの窪みがあって、その窪みごとにヘルニアの病名もわけられています。

 

 

『上回盲窩』
回腸の端から盲腸へ移る部分の上側にある窪み。

 

『下回盲窩』
回腸の端から盲腸へ移る部分の下側にある窪み。

 

『盲腸後窩』
その名の通り、盲腸の後ろにある窪み。盲腸と背中合わせの形になっている。

 

『虫垂後窩』
虫垂間膜と後腹膜皺襞(しゅうへき)との間にある窪み。
※後腹膜皺襞とは、盲腸の下の端から後ろの内側へ向かって伸びているしわ・ひだ。

 

 

これらの四通りのヘルニア種類がある「盲腸周囲ヘルニア」ですが、その確かな原因はあまりよくわかっていません。

 

 

腹腔内圧の上昇が原因だとか、後腹膜の癒着が原因だとか、血管性の変化・異常が原因などと言われています。
一説には、胎生期(赤ちゃんが母親のお腹の中にいる時期)の腸回転異常が原因とも言われています。

 

盲腸周囲ヘルニアにかかりやすい人

 

「盲腸周囲ヘルニア」は、その起こる場所によって「上回盲窩」「下回盲窩」「盲腸後窩」「虫垂後窩」の四つにわけられます。

 

 

なかでも、盲腸後窩がもっとも発症率が高くなっています。

 

 

女性より男性の方がかかりやすく、2倍以上の差があります。
年齢は、0歳から80歳代まで幅広く発症していますが、比較的、10歳未満と60、70代に多くみられます。

 

盲腸周囲ヘルニアの症状と診断方法

 

「盲腸周囲ヘルニア」は突然の腹部痛や吐き気、嘔吐などの症状を訴えますが、
たいがい他の病気と診断されて手術をおこなった際にヘルニアだとわかるケースが多くなっています。

 

 

症状

右下腹部(盲腸周囲)の圧痛やお腹が満たされている感覚などがあります。
それから、排便や排ガス(おなら)が出なくなるといった症状もあります。

 

 

たいがい症状の出ている場所などから、イレウス症状(腸ねん転・腸閉塞)か急性虫垂炎などが疑われます。

 

 

エックス線やCT、注腸造影などの診断方法がおこなわれますが、
盲腸周囲ヘルニアという病気が念頭にないと、なかなか正しい診断まで結びつかないようです。

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